2023 Spring / Summer Collection NUDE

2023 Spring / Summer Collection
“NUDE”

幼き日の瞳に映った色とりどりの花々
心に焼き付いて離れないあの日の光景

その一つ一つが記憶の中にある
未だに煌めいては止まない
私たちを創り上げたかけがえのない宝物

等身大であるということ
包み隠さずにこれが今の私たち

どうか在りのまま
在るがままに

Runway show movie

Look

Behind the scene

 デザイナー村松祐輔と関口愛弓それぞれの「等身大の記憶」が詰まった2023 Spring / Summer Collection “NUDE”。それぞれが青年期に出会ったありのままの美しさやかけがえのない記憶をコレクションに投影しました。

「NUDE」=等身大の探究は、関口が生まれ育った実家の景色から始まります。関口が得意とする繊細かつ大胆な刺繍図案やグラフィックを生み出す表現力の源泉となった色とりどりの花々が儚げに咲く庭のエッセンスは、コレクションの至るところに散りばめられます。

 一方で青年期の村松の感性を刺激した一つであるデイヴィッド・リンチのフィルムのような違和感を、ディテールやカラー、ショーピースとして織り交ぜ、コレクションの独自性をよりいっそう高めます。

 そんな「等身大」をヒントに、クラゲや鉱石からもMURRALらしいありのままの美しさを見出します。

 

 MURRALを象徴するオリジナル刺繍を施したレースシリーズは、”Garden Flower”と称して寄せ植えを好んでいた関口の母親が作る庭を鮮明に映し出しています。着る人の等身大の記憶を呼び起こすような唯一無二の刺繍レースは、フランネルフラワーやポピー、かすみ草など身近にある花々が咲き溢れます。前シーズンから続く「Everlasting embroidery」シリーズにもふんだんに使われた生地は、京都、栃木、富山、岐阜の4箇所の加工場を渡って職人達の技術によって丁寧に仕上げられています。 

 ”NUDE”を体現する要素として村松と関口は加工される前のありのままの形に独自の美をもつ鉱石に着目し、さまざまな表現方法に落とし込みました。

 

鉱石に花を添えたオリジナルのジャカード生地は、関口の手描きの図案をベースに群馬県桐生市の機屋で制作しました。多種多様な糸を他組織で織り込むカットジャカードを用いてボリュームのある生地に仕上げ、”Flower quartz jacquard”シリーズと名付けました。線密に計算された柄配色の糸に加えてランダムに糸が渡るラメ糸は、鉱石が自然と成長していく様を投影しています。

 鉱石のテクスチャーをダイレクトにプリントで再現した”Ore”シリーズは、あえて研磨する前の鉱石を選びありのままの姿を投影しました。プリントの土台生地に鈍い光沢の生地を使用することで表情に立体感と奥行きを与えています。モチーフに選んだ鉱石は透明感のあるJade(翡翠)と強さと儚さを備えたLabradorite(ラブラドライト)。この2つの鉱石は23SSシーズンのキーカラーとなっています。

 22秋冬コレクションから始まった収縮加工刺繍を施したシリーズは、鉱石の柄を描いた”Quartz embroidery”シリーズへと昇華させました。鉱石の凸凹した立体感や粗々しさを生地のテクスチャーでも表現するために、糸を打つ箇所の強弱やバランスを考慮して柄を描きました。また、今回は糸を2色使用し、春夏らしい軽さのあるデザインへと展開しました。

 青年期の村松の等身大を形成したデイヴィット・リンチの写真集『NUDES』。人の裸をリンチの独特な視点で捉えたこの写真集から”Fluffy jacquard”と称したシリーズが生まれました。肌のセンシュアルな質感を、翡翠とアクアマリンカラーのスパークナイロンカットジャカードで表現することで美しい中にも奇妙な違和感を残します。繊細な技術で透け感を維持しながらも、布と肌が重なった際の質感や表情まで精密に計算し、ランダムな長さの毛足が特徴的な軽やかで透け感のある生地に仕上げています。

 村松と関口はクラゲの自由気ままな浮遊感にも等身大を見出しました。アイテムのディテールを構築する上でクラゲの浮遊した様は1つのキーワードとなっています。揺れる度に表情を変えるディテールや紐使い、生地の分量を贅沢にとりダイナミックに表現したフレアやギャザーのシルエットは、MURRALが生み出す繊細で幻想的なクラゲの姿を反映しています。