October , 2025

#3 "雫の詩"

今シーズンのキーフラワーとなるのはシロバナエンレイソウ。

水分を含む事によって花の色が半透明へと変化するこの花は、
デザイナー関口の”繕い”への想いの元に選ばれました。

何かにつまづき何かに悩んだ時、
デザイナー関口は無性に雨を浴びたくなる感覚を覚えます。


内省的な表現を得意とする関口ならではの繕い方。


雨を浴びる事で迷いを溶かし、浄化させようとしてきました。

この花は幼少期の関口が過ごした自宅にも咲いており、
常に身近な花として彼女に寄り添っていました。

まるで彼女自身を見守るかのように。

そんなシロバナエンレイソウをモチーフに、
ケミカルフリンジという刺繍技法を用いて立体的に表現しています。

フリンジのように儚げに揺れる雫のモチーフは雨と涙を表現し
立体的なケミカルレースのモチーフは
職人のハンドカットにより再現しています。

複雑な切替の柄に加え、その色数の多さから、
刺繍工程から仕上がりに至るまで非常に時間を要る刺繍技術です。

雨と涙。


この言葉は同じ距離にいるんじゃないか、と思うことがあります。

恵みをもたらすのを雨とするならば、
涙もまた人の心の傷跡を流し、浄化させてくれるものではないかと思うからです。