July , 2025
#1 "繕う花"
25秋冬コレクションのテーマは”DARN ”
DARNとは直訳すると“繕う”。
この言葉には「破れたり壊れたりした部分を直す」という意味と、「身を整える」という意味の2つの意味があります。
ブランドを進める中で時に傷つき時に悩まながら今まで何度も諦めかけ、その度に何とか私たち自身の心を繕いながら前へと進んできました。
それはお世辞にも綺麗とは呼べるものではなく、継ぎ接ぎのように繕われています。
そんな私たちの繕ってきた、歩みの証明となるコレクションです。
テーマである“繕う”を表現しようとした際、真っ先に「パッチワーク」が頭に浮かびました。
その1つには、デザイナー村松の原体験が影響しています。
縫製技術も知識も無かった頃、カルチャーに憧れを求め針と糸だけで直向きに創作に向き合っていた日々。
そのプリミティブな体験と時間が、後にファッションへの世界へと導くきっかけとなりました。
そして今に至る、繕うファッションへの道が続いています。
パッチワークを私たちらしく表現できないかと模索している際、偶然「エンブクロス」という技法に出会いました。
ベースとなる土台生地の上に異なる素材と異なる形にカットした生地を乗せ、パッチワーク職人の手によって生地を1枚ずつ敷き詰め、刺繍をしていく技法です。
設計図での表現ではなく、職人の美的感覚とセンスが重要視される、まるでオートクチュールのような刺繍技術です。
モチーフには、リサーチの際に川辺で偶然出逢った花の絨毯を採用しました。
役目を終え、散った花弁が川一面に重なるように広がったその光景は、”繕う”という言葉の意味を表現しているかのようでした。
ドレスは華やかさと同時に強さを示すものでもあります。
消え入りそうな儚さに強さを。
赤の色彩が踊るドレスを作りたいと思いました。
この技術を広幅生地で制作できるのは、日本で1ヶ所しかありません。
表現できる刺繍機の減少により、多くの工場で再現が不可能となってしまったためです。
今回依頼をした刺繍工場、も過去には不景気と需要の無さからこの刺繍機を売り払おうと考えていたようです。
ですが、技術は財産。
金銭には変えられないと何とか思いとどまり、踏みとどまっていただいた、その努力のお陰でこうして今私たちが表現したいクリエイティブと出会うことができました。
このエピソード自体も、”繕う”という言葉の意味を体現しているように思えます。