今期のMURRALは「優雅さ」がキーワード。
デザイナー自身が日常の中で感じた優雅な経験や
過去の実体験を通しコレクションに反映させました。
既に完成している優雅さではなく
優雅であろうとする姿勢や豊かな未来を想い描く時間。
そうありたいと願うその心の豊かさにこそ
私たちが伝えたい“GRACE / 優雅さ“というメッセージがある。
それはほんの小さな
より身近に存在している
あなたがなりたい優雅な自分に近づくために
私たちのクリエーションは生きている
どうか優雅であれ。
私達の日常よ。
2022 Spring / Summer Collectionは、
上品かつ大胆な優雅さを感じさせるウェアを展開。
村松祐輔がコレクションストーリーを紡ぎ、
関口愛弓がデザインに落とし込む。
―――なぜ今、“GRACE” なのか?
物事や人との距離感に対して余裕が無くなってきていると
感じていました。
それでも日々は続き、消費されていきます。
そんな中でも心や姿勢だけには自信を持っていたい。
私が思う豊かさとは、地位や名誉などを指しているのではなく、人が「優雅」であろうとする心や姿勢だと思います。
そんな豊かさにこそ、本当の優雅さがあるのではないかと
思うのです。
―――どのような体験が”GRACE”を表現するヒントになったのか?
大切な人に向けて花束を渡そうと思いました。
大切な人が喜んでくれる姿を想像しながら。
その想像の時間は、毎日の景色をより豊かで輝かしいものにしてくれました。
未来を想う、誰かを想う事は「GRACE (豊かさ)」に繋がるのだとこの時に思いました。
―――制作において特にこだわった部分は?
「ボリュームとバランス」この2つに注力しています。
今までは、要素をプラスして構築し、フィニッシングしていた部分を今回は再検討しました。
ボリュームに対してのバランスを重視し、ファブリックやライン、シルエットを含めデザインしています。
―――Spring Collectionで、定番のFramed Flower シリーズにアルストロメリアの花を選んだ理由は?
随分前のことですが、少し元気のない時に気分を変えたくて
出先に寄ったお花屋さんでたまたま目についたアルストロメリアを一輪買いました。
そんな些細な出来事が、すごく優雅な瞬間に変わって。
今回のレースは私たちの身近にある一輪の花の凛々しさ、
優雅さを表現したくて描いた柄です。
―――“Maze”シリーズが生まれたきっかけは?
優雅さというテーマに私たち自身の過去の実体験も反映しています。
そのインスピレーションの1つが、スタンリーキューブリック監督が1980年に制作された『The Shining』です。
当時の私はまだ10代半ばで、この作品を観る前と観た後で自分の景色が一変しました。
いま思うと、この体験こそが私にとっての「優雅さ」という体験のファーストタッチだったのかもしれません。
劇中の舞台にもなっているホテル「オーバーロックホテル」のカーペットの柄にオマージュを捧げたオリジナルのファブリックに仕上げています。
“Maze”とは「迷路」という意味で、劇中のクライマックスでの印象的な迷路のシーンからネーミングの着想を得ています。
―――“Vase”シリーズや”Pottery”シリーズに込められた、「花瓶」「陶器」というキーワードが浮かんだ理由は?
MURRALでは毎シーズン、コレクションテーマに沿って様々な花にフォーカスしてきました。
ですがその花を活けるもの、すなわち花瓶や陶器自体にはフォーカスした事がなく、今回のコレクションでは「花と花瓶で1つの表現」という考えを初めて取り入れました。
花と花瓶の佇まいの表現は、今回のインスピレーションの1つにもなっているロバート・メイプルソープの写真集『Flowers』から。
日常にありふれているものも、目線や見方を変えればより優雅に豊かに見えるはず。
そんなメッセージをこの写真集から受け取りました。
陶器のインスピレーションでは、「Fat Lava」にフォーカスしました。
主に70年代西ドイツの工業製品として広く使われていたこの陶器は、デザイン性もMURRALに通づるものがあり、私たち自身もインテリアとして実際に生活の中に取り入れています。
―――Summer Collectionで展開される全面のダリアの刺繍にはどのような思いが込められている?
僕自身が大切なひとへ渡した花束がダリアでした。
ダリアの花言葉は豊かな愛情。花束を大切なひとへ贈る。
花束を贈るというとてもプリミティブな行為の中に、今季のテーマである「GRACE(優雅さ)」があると気付いた瞬間でもありました。
優雅さとは、誰かを想い未来を想うこと。
決して大袈裟ではなく、私達の日常や見渡す景色には優雅さが溢れていると思います。
大切なひとへの想いを込めて、ダリアモチーフの刺繍を全面に施したドレスを作りました。
まるで花束を渡すかのように。
―――葉脈から着想を得た”Leaf vein”シリーズを、豊かなカラーリングと布使いに仕上げた理由は?
春から夏への季節の移ろいと共に、木々の風景も変化を
していきます。
春コレクションはアルストロメリアの花にフォーカスし、
一輪の花の佇まいの強さを表現しました。
夏コレクションでは、佇まいといういわばマクロな視点から、よりもっと近いミクロな距離で木々と接してみました。そうすると、日常では気付かない視点や感覚に出会える事があります。
「葉」それ自体は特別なものではありません。
ただそのものを自分自身の視点でどう捉え、どう伝えるのか。
それがデザインの面白さであり、今シーズン伝えたい優雅さの一つだと思います。
葉脈の流れるような切替に使用した7種類の生地は、それぞれ表情が違う生地感のものをセレクト。葉の艶やかさやテクスチャーを多様な生地を用いて表現しています。
独特なカラーリングは、グリーンやオレンジを基本ベースに置きながら対になる配色を組み、ポイントにベーシックカラーを取り入れる事で自然と肌馴染みがよくなるように色彩設計しました。
―――今シーズンのコレクションを通して伝えたいメッセージ
私たちがコレクションで伝えたい”優雅さ”とは、決して地位や名誉のことを指しているのではありません。
何かを信じ未来を想うこと、そして日常の繰り返す生活の中で少しでも優雅であろうとするその心こそが真に優雅だと思うのです。
人それぞれが手にしたいと思う”優雅さ”へのきっかけとして、
私たちのコレクションや洋服が側にいて寄り添えられたらと
切に思います。
どうか優雅であれ。私たちの日常よ。
どこか遠い世界への入り口
雄麗な音楽と共に未来へと想いを馳せながら